革命50年・ゲバラ生誕80年記念友好フォーラム開く

寒さをおして延べ700人が参集

 キューバ友好円卓会議は2009年1月24日、東京都中野区の「なかのZERO小ホール」で「革命50年・ゲバラ生誕80年記念友好フォーラム 知られざる豊かな国――キューバを通して見えてくる世界」を開催しました。キューバ革命とは何だったのか、革命の成果とはどんなものか、いまな私たち引きつけてやまないキューバの魅力とはいったい何なのかを明らかにしょうというのが友好フォーラムの狙いでした。
 
 


 第1部はフォーラムで午後2時に開会し、まず、ホセ・フェルナンデス・デ・コシーオ駐日キューバ大使があいさつ、次いでキューバと関わりの深い4人の講師がそれぞれのテーマに沿って講演、それに基づいて講師と入場者との間で質疑応答が行われました。


第1部の講演要旨の紹介

  一人ずつに別々に講演していただいた方がいいんじゃないかというような、それぞれがキューバに深く熱く濃く関わっているパネラーを4人も招くという贅沢なフォーラムでした。世界中を飛び回っている4人がこの日この時に同席する、というのも奇跡のようでした。それぞれの経験から語られるキューバの魅力は、共鳴、増幅して、聴いている側にも豊かに伝わってきたのではないでしょうか。25分という短い持ち時間に大切なことをしっかり語ってくださったパネラーのみなさんに感謝します。


 ☆「祝祭と叛乱・建前の国キューバのカーニバル」 白根全
  日本でただ1人、世界で2人というカーニバル評論家という白根さん、サンチャゴ・デ・クーバの華やかなカーニバルの様子を撮った300枚の写真をバックにして、「7月26日のモンカダ襲撃はカーニバルの日に合わせて計画された。革命はカーニバルなくしては語れないんです」と話を始められました 「写真だけではどうしても伝わりきれないもので、リズムとリズムのすき間に同列のリズムを打ち込むという感じの音なんですよねえ。実際にぜひ体験してください」。フォーラムの幕開けにふさわしい打ち上げ花火のようなお話でした。
 
 


 ☆‘90〜‘08 キューバが語ってくれたこと 工藤律子
  メキシコに貧困層の人たちの中で生活していた時に、キューバにいけるものなら行った方がいい、と言われて1990年に初めて取材にいった工藤さん。7月26日は最大の式典とカーニバルの日でした。91年に名付け親となることになったユーヒ君と会います。一番経済的にどん底の時代のキューバでした。配給以外に物を買う手段はなく、車がないので自転車が使われ、半日以上停電している地区があったり、人びとはテレビで日本のテレビ番組『おしん』を見て自らの窮状の鏡としていたり。筏難民がマイアミに頻繁に渡っていた頃です。 その後、93年に米ドルが使用許可となり、94年に自由市場ができ、格差が広がっていきます。栄養の差は体格の格差をも出現させました。90年代後半に観光客が100万人を突破し、98年にローマ法王がカストロと会談をしてから、にわかに洗礼ブームが起こります。そんな社会の変化の中でも「チェのようになろう、自分のことではなくみんなのことを考えよう」という考え方は保たれていたようです。 
 メキシコやフィリピンなどでストリートチルドレンの傍らでずっと活動を続けてきている工藤さんは「今、グローバリゼーションが人と人を分断していきますが、本当のグローバリゼーションは人と人とがつながっていく社会でなくてはならないはずです。人びとが分かちあうくらしができるように、ストリートチルドレンがいなくていい世界になるようにするためには、今こそキューバの闘いをみていく意味があると思います」と締めくくりました。
 
 


 ☆「雇用政策と直結したキューバの教育」 吉田太郎
  パワーポイントを駆使し、弁士さながらの「太郎節」での「世界がキューバの高学力に注目するわけ」の謎解きでした。革命達成の後、1961年からキューバでは「知っている人が知らない人に教える」という実践がなされ、それが教育の分野でも格差をなくすことにつながりました。学校ではエムラシオンというグループ学習で、子どもたちは仲間と助け合って自分を高めます。ラテンアメリカ教育評価水準センター(LLECE=Laboratory Latinoamericano de Evaluacion de la Calidad de la Educacion)が実施した試験で、キューバでビリの子の方がアルゼンチンのトップの子より上(?)と言われるほど、ラテンアメリカではGDPの決して高くないキューバの成績が図抜けています。(第1回の結果で、第二回はそうでもないそうですが)値の高いチリは教育にも市場原理を導入してきましたが、結局成果をあげることはできませんでした。
  「『フィデルのせい』で、ALBA(アメリカ大陸ボリバル的オルタナティブ)に結集する国が6カ国になり、ラテンアメリカが新自由主義に反対するようになっています。農業や医療、教育は自由化してはなりません。格差を認めないのはどこか不自由ではあります。でも「自由」と「民主主義」を一緒にすると、「自由民主党」になってしまうんですよね。」数字にきっちり裏付けられたデータを見せられると、キューバのさまざまな問題点が浮かび上がり、キューバは楽園とはほど遠いということも理解できます。でも、この体たらくの日本と比べてどうだ、との思いが募ります。
 
 


 ☆「人を信じる人びと」 戸井十月
  吉田太郎さんの話のあとではやりにくい、とおっしゃりながら登場。現在上映中の「チェ」の映画に触れ、「配給元から上映前にどんなものか見てくれと言われました。この8年間、あまりにもブッシュのアメリカが耐え難くひどかったのためにできたゲバラの映画です。 計算したわけではないけれどアメリカが破綻した時に完成した映画でした。来日したソダーバーグ監督にメッセージを請うと、『連帯すること』と答えてくれました。これまで、モーターサイクルでのチェの旅仲間だったアルベルト・グラナダ、グランマ号の船長だったオルランド・フェルナンデス、チェと一緒に使節団で日本に来たことのあるオルランド・ボレゴらにインタビューしてきましたが、『もしチェが今どこかにまた行こうと言ったら、もちろん行く』と誰もが答えていました。2002年にフィデルに会う機会があって、これまで一番大切にしてきたことは何か?と訊ねた時に、彼は『誠実であること』と答えました。人間同士のつながりがあって革命が成功したことの証だと思います。これらの人びととのインタビューの様子は最新著『ゲバラ最期の時』に全部載ってますのでぜひ読んでください。面白いです」
 
 

 

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